《過去の罪(*1)》
by Rich Hagon
長い長いマジック暦の道のりの間で、君は数千を超えるマッチをプレイしているかもしれない。君の全ての対戦相手の中で、おそらくほんの数名は君とこのゲームとの関係においてとても大きな影響を与えていることだろう。特に、君がこのゲームにおいて有名人だとすれば、第4ラウンドで誰とも知れないプレイヤーに当たって彼を倒しても君のマジックの思い出の中では取るに足らないことだと思う。
でも、その対戦相手にとっては、君とただ勝負すること自体がとんでもないイベントで、君の言動1つ1つが彼らの記憶の中にー例え君がそのマッチのみならず、そのトーナメントのこと自体を忘れてしまってもー深く、永遠に刻まれていることだろう。
Jamie Parkeと話をしていて、すぐ横に僕の知らない、そりゃもう背が高いなんてもんじゃないってくらい大きなアメリカ人が立っていることに気がついた。Jamieは僕を彼、Mark le Pineに紹介してくれた。そして僕とJamieの間にはちょっとした過去があることに気がつく。
時を遡ること1999年のロンドン、あれは僕の始めてのプロツアーだった。最初のラウンドを勝って、2回戦ではRpahel Levyに負けたところだった。3回戦で、僕は当時17歳であったle Pineに合い間見える、そしてその当時の彼はマジック界でもっとも熱い若手プレイヤーの一人として人気を博していて、ParkeがTOP8入りし、日曜にKai Buddeに負けてしまった同年の世界選手権でも、le PineはKaiのすぐ後ろで惜しくもTOP8を逃すという好位置につけていたんだ。
僕はめちゃくちゃ緊張してしまっていて、le Pineが僕のデッキをシャッフルした後に僕が差し出したデッキが38枚しかなかったこと告げると、まるで世界が音を立てて崩れていくようだった。恥ずかしくて、信じられなくて、当惑して、、僕は狂ったように消えた2枚のカードを探した。するとそいつらは僕のデッキケースの側面にしっかりとへばりついていた。僕は当然ゲームロスを覚悟していた。するとMarkが言う、『俺がいい奴でよかったな』と。彼はジャッジを呼ばなかったんだ。タダで転がり込む勝利を、求めなかった。
彼の寛大さをいいことに、僕は1ゲームで彼を完膚なきまでに叩きのめし、第2ゲームも僕の思惑通りになろうとしていた。《時間の名人/Temporal Adept》の能力を起動して、ついに彼を僕が望んでいた展開へと追い込む。そう、第2ターンに、彼のランドを1枚で止めたんだー永遠にね。でも残念ながら、それでも僕のライフはやっかいなほぼ毎ターン繰り出される小さなフライヤー達によって減っていて、ライフが6まで落ち込んだところで僕は我慢できなくなった。《時間の名人/Temporal Adept》でのバウンス戦略を捨てて、Markに1ターンだけ、3マナを与えることを許したんだ。すると、たった1枚の《うんざり/Sick and Tired》で僕の《時間の名人/Temporal Adept》は死に、また別のタフネス1のクリーチャーも殺され、間もなくして、僕も死んだ。もちろん、彼は第3ゲームも勝ち、その日それ以降、僕が第2ゲームを取ることはなかった。
今日話をしたけど、彼は僕のことを覚えていなかった。僕と対戦したことも覚えていないし、僕を倒したことも覚えていない、あと少しで《時間の名人/Temporal Adept》によるロックをかけられそうになったことも、《うんざり/Sick and Tired》のことも、ましてや彼が見せる必要のなかった気まぐれの優しさを僕に見せたことすらも、覚えていなかった。
でも、僕は覚えている。そして、彼のーMark le Pine、現在26歳、東海岸にある巨大な多人数オンラインゲーム会社のマネージャーをしており、ここインディアナポリスにはわずか1byeを持って来ているーマジック人生の中で長い間忘れられていたからこそ、僕のマジック・ストーリーの中で特別な存在であるんだ。
優しさってのは、時折、君の記憶にとどまり続けようと戻ってくるもんなんだよ。
(*) -訳注
1, ラヴニカに《過去の罪/Sins of the Past》、同名カードあり。
by Rich Hagon
長い長いマジック暦の道のりの間で、君は数千を超えるマッチをプレイしているかもしれない。君の全ての対戦相手の中で、おそらくほんの数名は君とこのゲームとの関係においてとても大きな影響を与えていることだろう。特に、君がこのゲームにおいて有名人だとすれば、第4ラウンドで誰とも知れないプレイヤーに当たって彼を倒しても君のマジックの思い出の中では取るに足らないことだと思う。
でも、その対戦相手にとっては、君とただ勝負すること自体がとんでもないイベントで、君の言動1つ1つが彼らの記憶の中にー例え君がそのマッチのみならず、そのトーナメントのこと自体を忘れてしまってもー深く、永遠に刻まれていることだろう。
Jamie Parkeと話をしていて、すぐ横に僕の知らない、そりゃもう背が高いなんてもんじゃないってくらい大きなアメリカ人が立っていることに気がついた。Jamieは僕を彼、Mark le Pineに紹介してくれた。そして僕とJamieの間にはちょっとした過去があることに気がつく。
時を遡ること1999年のロンドン、あれは僕の始めてのプロツアーだった。最初のラウンドを勝って、2回戦ではRpahel Levyに負けたところだった。3回戦で、僕は当時17歳であったle Pineに合い間見える、そしてその当時の彼はマジック界でもっとも熱い若手プレイヤーの一人として人気を博していて、ParkeがTOP8入りし、日曜にKai Buddeに負けてしまった同年の世界選手権でも、le PineはKaiのすぐ後ろで惜しくもTOP8を逃すという好位置につけていたんだ。
僕はめちゃくちゃ緊張してしまっていて、le Pineが僕のデッキをシャッフルした後に僕が差し出したデッキが38枚しかなかったこと告げると、まるで世界が音を立てて崩れていくようだった。恥ずかしくて、信じられなくて、当惑して、、僕は狂ったように消えた2枚のカードを探した。するとそいつらは僕のデッキケースの側面にしっかりとへばりついていた。僕は当然ゲームロスを覚悟していた。するとMarkが言う、『俺がいい奴でよかったな』と。彼はジャッジを呼ばなかったんだ。タダで転がり込む勝利を、求めなかった。
彼の寛大さをいいことに、僕は1ゲームで彼を完膚なきまでに叩きのめし、第2ゲームも僕の思惑通りになろうとしていた。《時間の名人/Temporal Adept》の能力を起動して、ついに彼を僕が望んでいた展開へと追い込む。そう、第2ターンに、彼のランドを1枚で止めたんだー永遠にね。でも残念ながら、それでも僕のライフはやっかいなほぼ毎ターン繰り出される小さなフライヤー達によって減っていて、ライフが6まで落ち込んだところで僕は我慢できなくなった。《時間の名人/Temporal Adept》でのバウンス戦略を捨てて、Markに1ターンだけ、3マナを与えることを許したんだ。すると、たった1枚の《うんざり/Sick and Tired》で僕の《時間の名人/Temporal Adept》は死に、また別のタフネス1のクリーチャーも殺され、間もなくして、僕も死んだ。もちろん、彼は第3ゲームも勝ち、その日それ以降、僕が第2ゲームを取ることはなかった。
今日話をしたけど、彼は僕のことを覚えていなかった。僕と対戦したことも覚えていないし、僕を倒したことも覚えていない、あと少しで《時間の名人/Temporal Adept》によるロックをかけられそうになったことも、《うんざり/Sick and Tired》のことも、ましてや彼が見せる必要のなかった気まぐれの優しさを僕に見せたことすらも、覚えていなかった。
でも、僕は覚えている。そして、彼のーMark le Pine、現在26歳、東海岸にある巨大な多人数オンラインゲーム会社のマネージャーをしており、ここインディアナポリスにはわずか1byeを持って来ているーマジック人生の中で長い間忘れられていたからこそ、僕のマジック・ストーリーの中で特別な存在であるんだ。
優しさってのは、時折、君の記憶にとどまり続けようと戻ってくるもんなんだよ。
(*) -訳注
1, ラヴニカに《過去の罪/Sins of the Past》、同名カードあり。
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